体には優れたセンサーが付いていて、あなたの体の状態を正確にあなたに伝えてくれます。


そのようなセンサーのひとつに「痛み」というものがあり、体のどこかを動かすと痛いときには「そのような動かし方はしてくれるな」という体からのサインであり、


動かすと気持ちがいい場合には「動かしてくれ」という体からのサインなのです。


体のセンサーが痛みや気持ちよさを通して体の状態を伝えてくれるということを、腰痛を例にお話いたします。

目次

痛い動作はせず、気持ちがいい動きをする

腰の痛い人から「痛くても腰を動かしたほうがいいでしょうか?」という質問をいただくことがあります。

腰痛も千差万別で、動かしたほうが良い場合とそうでない場合とがあり、

あるいは、特定の方向に動かすのは良くないが、それ以外の方向へは動かしたほうが良いという場合もあります。

このように聞くと、大層難しく感じるかもしれませんが、そうでもありません。

動かすと痛くて困る場合は動かさないほうがよく、動かすと気持ちがいい場合は動かしたほうが良い。

そして、特定の方向に動かすと痛いがそれ以外は大丈夫という場合は痛くない方へ動かすのが良いのです。


つまり、冒頭でお話した「痛み」や「気持ちよさ」という体のセンサーが教えてくれるサインに従っていればよいのです。

具体的な例を挙げてみます。

ギックリ腰は安静が基本だが例外あり

急性の腰痛、いわゆるギックリ腰は基本的には安静が必要です。

ギックリ腰にも椎間板を痛めた場合、腰椎の関節を痛めた場合、筋肉を痛めた場合など様々なケースがありますが、無理に動かすと炎症が広がり痛みがひどくなるからです。

ただし、2つの例外があります。

ひとつは特定の動作を避けていれば痛くなく生活できる場合で、このようなときには痛い動作を取らないように動くのは問題ありません。

組織の損傷が限定的で炎症もひどくないので、無理な動きをしなければ悪化しないからです。

もうひとつは同じ姿勢でいると痛くなってくるタイプの痛みがある場合です。

アルコールや砂糖などを摂りすぎている方に多い腰痛で、食生活が原因で腰に循環障害と炎症がおきているのです。

このような方はじっとしていると痛いので、椅子に座っていてもモゾモゾと腰を動かしていたりします。

このような状態のときにはウォーキングなど全身の循環が良くなるような運動をしたほうがよく、無理のない範囲でストレッチをするとさらに痛みが楽になる場合もあります。

このように、動いたほうが良い場合には自然と体を動かしたくなるし、動いてはいけないときには強い痛みのため横になってじっとしていたくなるのです。

慢性の腰痛も気持ちがいい方へストレッチ

慢性腰痛の場合も、体の感覚に従うという同じ原則が当てはまります。

慢性腰痛には、後ろに反らすと痛いタイプと前に曲げると痛いタイプがあります。

(前後とも両方向痛い場合や、じっとしていると痛いタイプについてはまたお話します。)

後ろにそらすと痛いタイプの腰痛で一番多いのは、腰椎の関節部分が原因となる痛みです。

(図の赤いしるしのところが関節部分です)

このタイプの方は腰を伸ばすと関節部分が圧迫されるために、椅子から立ち上がるときなどに腰が伸びず、しばらく歩くうちに徐々に体がまっすぐになります。

このような方が、腰を後ろにそらすストレッチをしても、痛いばかりで効果は出ません。前に曲げるストレッチのほうが効果的です。

前に曲げることで関節周囲のコリやこわばりがほぐれ、関節部分が広げられることで循環も良くなるからです。

そして、実際にやってみるとわかると思いますが、このタイプの方にとって後ろにそらすストレッチは痛く、前に曲げるストレッチは気持ちがいいのです。

痛いことを無理にやっても効果は出ず、気持ちがいい方向に動かすことが効果を出すのです。

前に曲げると痛いタイプの腰痛にも、この原則は当てはまります。

前に曲げると痛いタイプで多いのは、慢性の椎間板性の腰痛ですが、このタイプは腰を前に曲げるストレッチは効果がないばかりか腰痛を悪化させることもあります。

このタイプの方は、腰を後ろにそらしたときに気持ちよく感じることが多く、意識してそのようなストレッチを行うことで腰痛が改善されていくこともあります。

ちなみに、前に曲げると痛いタイプの腰痛には、腰の筋肉のこわばりが痛みの原因であることもあり、この場合前に曲げるストレッチで楽になることがあります。

「前に曲げると痛いのに前に曲げるとよい」と言うと、痛い方に動かさないという原則に反するように聞こえますが、そうではありません。

このタイプの方は前に曲げると痛みを感じますが、同時に気持ちよくもあるのです。いわゆる「痛気持ちいい」という状態です。

痛気持ちいい時には、自然とそちらの方向に動かしたくなります。体がそれを望んでいるのですね。

冷やす、温めるも気持ちがいい方を選ぶ

動かす方向だけでなく、温めるべきか冷やすべきかについても、体のセンサーが教えてくれます。

冷やしたほうが良い場合には、冷やすと気持ちがよく、温めたほうが良い場合には、温めると気持ちがいいのです。

これは腰痛だけでなく、捻挫や打撲などの痛みや、関節痛、神経痛、肩こりなど全てに当てはまる原則です

仮にお医者さんが冷湿布をくれた場合でも、貼っていても気持ちよくなく、お風呂で温めたほうが気持ちがいい場合には湿布は外すべきです。体が温めてもらうことを望んでいるからです。

多くの場合、医者は「まず冷湿布を出してみて、効かない場合には温湿布に変える」というマニュアルに従って湿布を出しているのであり、あなたの痛みを理解した上で湿布を出しているわけではないのです。

あなたの体の状態を、あなたに教えてくれるのはお医者さんではなく、あなたの体のセンサーなのです。

今日も最後までよんでいただき、ありがとうございました。