前回の記事で、なんの症状もない人に病気の心配をさせるテレビ番組や雑誌記事は、ニセの健康情報だと書きました。


体に異常があれば、五感という優れたセンサーがきちんと知らせてくれることや


病気の最大の原因は不安なので、病気の心配をさせるニセの情報を見る必要はないとお伝えしました。


さて、今回は何らかの症状がある場合について考えてみます。

目次

不安は人間の性(さが)、病気を心配しがち

意識的に不安をあおる人たち

テレビなどで次のような話が紹介されることがあります。

 しつこい頭痛が続いたので検査を受けたら脳腫瘍であった。

 いつまでも治らない腰痛がガンであることが判明した。

このようなことは、まれにではありますが、実際に起こることなのでニセの情報とは言えません。

しかし、頭痛や腰痛で悩んでいるときにこのような情報にふれれば心配になるのが人の常で、

風邪の頭痛なのに、脳外科でCT検査を受けた、とか

自分の腰痛もガンではないかと心配し不眠症になった

などという気の毒なケースが出てくるのです。

そして、多くの人が余計な心配になることを知りながら、あえてそうさせるような情報発信をしている専門家も少なくありません。

不安をあおったほうが視聴率も上がるし、不安になった人が病院に駆け込めば病院が儲かるからです。

このような人は、お金儲けのために人を不安に陥れる悪質な情報発信者であると私は思います 。

専門家も不安を感じている

中には「このようなケースでは要注意」ということを伝えてくれる番組もあります。頭痛を例に取ると

「四六時中頭痛が続き、日を追ってひどくなる場合は脳腫瘍が疑われます。

バットで殴られたような強い頭痛が突然出た場合にはくも膜下出血が疑われます。」

というように、危険なケースを具体的に教えてくれる番組は、親切な番組だと言えます。

しかし不安になるのは人間の性(さが)なので、それらのケースに当てはまらなくても悪い病気を心配するひとはたくさんいるのです。

本来は「このような場合には心配いらない」というケースも説明するべきだと私は思います。

「慢性の頭痛でも、痛かったり痛くなかったりする場合は大丈夫です」

「強い頭痛でも徐々に出てきた場合は心配はいりません」

と説明してくれれば余計な心配をする人はずっと減るのでしょうが、そこまで言ってくれる専門家を見たことはありません。

それは、悪い病気でない人が過剰に心配をしても、表立って非難されることはありませんが、

悪い病気が隠れている人が情報を正しく受け取らず手遅れになった場合、非難されてしまうことを恐れているからかもしれません。

人々を安心させるよりも、多少余計に心配させておくほうが我が身は安全だ。無意識のうちにそう考える専門家は多いのです。

ちなみにテレビのコロナ報道が、不安をあおる方向にばかり偏るのも、何かあったときに責任を取りたくないという、専門家やテレビ局の保身にも原因があるのではないでしょうか?

不安はテレビを見る人だけでなく、情報発信する側も感じているのです。まさに、不安は人間の性(さが)なのです。

思考は本来ネガティブである

近年は、体調が悪いときにインターネットで自分の症状について調べる人が増えています。

便利な世の中になりましたが、調べれば調べるほど不安になりかえって体調を崩す人がたくさんいます。

それは、人は多くの情報の中から危険を指し示す情報に目を留め、そのことを心配するという思考の性質があるからです。

我が身を守るために、ネガティブな情報に注目するのですね。思考というのは本来ネガティブな性質を持つのです。

ですから、体調が悪いときに自分の症状についてネットで調べることを、わたしはあまりおすすめしません。

体のつらい部分を観察してみること

しかし、あまりネットで調べないほうが良いと言われても、なかなかそうはできないこともあります。

調べたいのに調べないでいることが、不安を増してくる場合もあるからです。

では、なにか症状があって不安なときには、どうしたら良いのでしょうか?

心配いらないと気づいたり、ときには原因がわかったり

私は、体のつらい部分を観察してみることをおすすめします。

例えば頭が痛いときには、頭の痛さを観察してみる。

どのへんが痛いのかな?

どんな感じの痛みかな?

どういうときに痛くなって、どういうときは楽なのかな?

こうしたことを観察していると、自分の痛みが悪い病気を心配するようなものではないと気付いたりします。

例えば、仕事のことを考えていると痛みが強くなる。リラックスしていると弱くなる、ということに気づき、

そういえば最近家に帰っても仕事のことばかり考えていたな、などと思い当たったりすることもあります。

痛みや症状が楽になることも

また、不思議なことに観察しているうちにつらい部分が楽になってくる場合もあります。

痛みを観察していたら痛みが弱くなった、コリを観察していたらコリが軽くなった、ということがわりとよくあるのです。

これには2つの理由があります。

ひとつは痛みやコリといった症状は、異常があることを教えてくれる体からのシグナルだからです。

そのため、意識を向けてしっかり感じてあげると、役割を終えて弱くなることがあるのですが、

気をそらして感じないようにしたり、不安のあまり考え事の中に入り込んでいると、異常を知らせるシグナルが伝わっていないと体は感じ、痛みやコリをより強く発する場合があるのです。


もうひとつの理由は、痛みがあると人は不安になるものですが、不安が痛みを強くしているからです。

これは「気の持ちよう」の話ではなく、不安という精神状態が自律神経を緊張させ、筋肉や血管を収縮させ痛みを実際に強くするのです。

このようなときに痛みを観察しようとすると、「不安」という心の状態から少し離れることができます。

不安は考えの中に存在しますが、観察することは考えることとは別の種類の脳の活動だからです。

これは、やってみるとわかると思います。

考えていると不安は強くなりますが、観察していると不安は力を失ってゆくのです。

そして、不安が弱くなることで、痛みも軽くなる場合が多いのです。


ときには、痛みなどの症状を観察しても症状の原因もわからないし、痛みも軽くならないということもあるでしょう。

しかし、考えることから離れ不安の影響を受けなくなったぶん、あなたの感じるつらさや苦しさはきっと楽になっていることでしょう。


今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。