睡眠不足は腰痛の主な原因の一つです。

このことは意外と知られておらず、整形外科のお医者さんでも腰痛の患者さんに「しっかり寝てください」とはあまり言いません。

しかし、腰痛の予防や治療のために睡眠はとても大切なものなのです。

目次

睡眠不足が原因の腰痛は椎間板に負担がかかっている!

なぜ睡眠不足は腰痛をひきおこすのでしょうか?
それは脊柱の疲労回復、特に椎間板の回復には睡眠が不可欠だからです。

脊柱は背骨(椎骨)と椎間板とが交互に積み重なって出来ています。(図)

背骨は骨ですが、椎間板は軟骨で出来ています。
軟骨なので柔軟性があり、それによりいろいろな方向への腰の動きが可能になっています。

起きて活動している時、脊柱は直立した状態になります。
骨盤の上で脊柱が縦に伸び、その上に頭が乗っている状態です。

そのため、起きている間ずっと頭の重さが首や肩にかかり、その重さが背中にかかり、
さらにそれらの重さが腰にかかっているのです。
つまり、腰には上半身の体重を支えるという負担がかかり続けるのです。

【生物学的な視点では】
この、脊柱の直立状態は、人間にとっては当たり前のことですが、生物学的にはとても珍しい状態です。
人間以外のほとんどすべての動物は、四本足で歩くため脊椎が直立することなどなく、骨盤から背骨が横にのびた状態で活動するからです。

そのため人間のように腰に体重がかかり続けることはなく、腰痛はめったに起こらないとも言われています。

さて、人間の場合は起きているあいだ上半身の体重が腰にかかり続けるために、椎間板は持続的に圧迫され、まるで押しつぶされた餅のように高さが減って外側にふくらんだ状態になります。
そのため朝起きたときにくらべ、夜寝る前には身長が1センチほど低くなると言われています。

この押しつぶされた椎間板は、睡眠を取ることにより元の形や高さに回復するのです。
ちなみに、椎間板は軟骨でできているため血管はなく、リンパ液によって栄養されています。
そのために血管で栄養されている筋肉に比べ回復に時間がかかると言われています。

ですから、睡眠時間の確保は腰のためにとても大切なのです。

睡眠不足は様々な痛みの原因に

睡眠が不足すると、椎間板の回復のための時間が不足する上に、起きている時間が増えることで負担のかかる時間は長くなります。

このような椎間板への負担は、ヘルニアのような椎間板が原因の腰痛を引き起こすこともありますし、
椎間板の高さが減ることで上下の椎骨の間の関節(椎間関節、赤矢印の部分)にも圧迫が加わり、関節由来の腰痛も引き起こされることがあります。

また、腰のカーブが減少することで筋肉の循環がわるくなり、腰の筋肉に痛みを引き起こすこともあります。

睡眠不足は様々な腰痛の原因となるのです。
慢性的な腰痛のある方はもちろんのこと、そうでない方も睡眠不足が続かないようにご注意ください。

不眠症の人のための対処法

ここまで読んでくださった方の中で、「不眠症の人はどうすればよいのか」という疑問を持たれた方もいるかもしれません。

不眠症は辛い症状ですが椎間板の回復という点に関して言えば、横になって体を休めてあげれば椎間板は回復します。
必ずしも睡眠状態にならなくても、体を横にして腰に体重の負荷がかからない状態で一定時間体を休めてあげれば大丈夫なのです。

また、目を閉じて横になって体を6時間休めてあげれば、血液中の老廃物も完全に取り除かれ、大脳皮質での記憶の整理も行われるという実験結果も報告されています。

つまり、眠れなくても横になっていれば心や体はきちんと回復するのです。

とは言え眠りたくても眠れない状態というのはつらいことだと思います。
不眠症の多くは鍼灸治療が効果的です。
お困りの方はぜひご相談くださいね。

また、椎間板は頸椎の部分、つまり首の骨と骨の間にもありますので、起きているだけで負担がかかるという状態は、首や肩に関しても同じことです。

首の痛みや肩こりに悩まされている方にとっても、きちんとした睡眠を取ることはとても大切なことです。
夜ふかしをせず、早めに布団に入るよう心がけてください。