肩こりがひどくて病院に行ったら、血圧が高くなっていて薬を飲むことになった、という話を聞くことがあります。

あるいは、頭痛やめまいで病院に行ったら「高血圧」と言われ薬を出されたという話も聞きます。

血圧が上がって肩こりや頭痛が出た、だから薬で血圧を下げる、

という話は一見もっともに感じます。


しかし、肩こりや頭痛の治療を長年してきた私の経験から言えば、

このような場合、血圧の薬を飲むよりも鍼灸で肩こりや頭痛を治すべきだと思います。

目次

高血圧が肩こりの原因なのではない

血圧の薬は飲み始めると一生飲むことになる場合が多く、
副作用も心配ですからできるだけ飲まないほうが良いと私は考えます。

また、薬で血圧を下げても肩こりや頭痛が続くこともありますし、
鍼灸で頭痛や肩こりを治療すると血圧が下がることもよくあります。

なぜ血圧を下げても肩こりや頭痛が続いたり、
鍼灸で肩こりや頭痛を治療すると血圧も下がることがあるのでしょうか?

それは、高血圧が肩こりや頭痛を引き起こしているのではなく、
肩こりや頭痛を起こしている体の状態が、血圧も上昇させているからです。

つまり高血圧は原因ではなく結果なので、薬で血圧を下げても問題の解決にはならないのです。

肩こりと高血圧はこれらが原因

では、どのような体の状態が肩こりや頭痛を引き起こし、
血圧も上昇させているのでしょうか?

代表的なものを2つご紹介します。
なお、肩こりと頭痛は同時に現れることも多いのですが、そうでないこともあります。
話をわかりやすくするために、ここからは肩こりを中心にお話します。


肩こりと血圧の上昇をもたらす体の状態としては
1,自律神経が緊張した状態 と
2,血液循環が悪くなった状態
が挙げられます。

1,自律神経の緊張

私達の体は、手足など自分の意志で動かすことのできる部分と、
胃腸や心臓などのように自分の意志で動かすことができず、
体の調整作用により「自動運転」されている部分とがあります。

この、「自動運転」されている部分を調整しているのが自律神経です。

自律神経に調整されている体の部分は非常に多く
先ほど紹介した胃腸や心臓など内臓のすべてに加えて

全身の筋肉や血管の緊張度、皮膚の汗腺(汗の出る穴)の開閉、
瞳孔(黒目)の大きさや、鼓膜の張りなど
体の様々な部分が自律神経により調整されています。

この自律神経は、大雑把に説明すると
交感神経という緊張時や興奮時に働く神経と、
副交感神経という休息時に働く神経の2つから成り立っています

そのため、ストレス状態が続き、心配事やイライラを抱えていたりすると
交感神経の働きが過剰になります。

すると肩の筋肉が緊張して、無意識に肩に力が入った状態になります。
これが、肩こりの原因です。

また血管の壁は筋肉でできていますが、
交感神経の緊張は、血管の壁の筋肉も収縮させ
その結果、血管は細く硬い状態になります。

また、緊張するとドキドキすることからおわかりのように
交感神経の緊張は心臓の拍動も強め、勢いよく血液が送り出されるようになります。

勢いよく送り出された血液が、細くなった血管の中を通るのですから
血管の壁にかかる圧力は当然高くなります。
これが、血圧が上昇する原因です。

肩に力が入るのも、血圧が上がるのも、不安や緊張という状態のときに
体がいつでも行動を起こせるように交感神経が準備を整えている状態だといえます。

つまり、肩こりも高血圧も危険から身を守るための体の自然な反応であって、
病気と考えるのは見当違いなのかもしれません。

ですが、肩こりが続くのはつらいことですし、血圧が上がりっぱなしでは体に負担もかかります。

このような状態の時、鍼灸ではツボを使って交感神経の興奮を抑え、
副交感神経がしっかり働けるように体の状態を整えます。

自律神経がバランスよく働けるようになると、肩こりが楽になるととともに血圧も自然に落ち着くのです。

2,血液循環の不良

人間が健康を保つためには、適度に体を動かしている必要があります。
それは、心臓により体の隅々にまで送られた血液は
筋肉が動かされることで心臓まできちんと帰ってくることができるからです。

ですから、デスクワークなどで同じ姿勢をとっていると血液循環が悪くなり、それが肩こりの原因になります。

そして、このような循環不良の状態が続くと、
心臓はより強い圧力で血液を送り出して、
循環の悪い場所にもなんとか血液を循環させようとします。

すると血管壁に当たる血液の圧は強くなるので、血圧が上昇するのです。

ですから、この場合も高血圧は病気と呼ぶのは適当ではなく、
循環が悪くてもなんとか健康を保とうと、心臓ががんばった状態と言えるのではないでしょうか?

ですから、薬で血圧を下げるのはなんの解決にもならず、
鍼灸やマッサージで循環を良くして肩こりを解消し、
心臓が無理をしなくても体の隅々にまで血液が循環できるようにすることが大切ではないでしょうか?

さらに、適度な運動をする習慣を作ったり、
デスクワークの合間に休憩を取って立ち上がり体を動かしたりすることは、
もっと大切だと思うのです。

血圧の基準値にも問題あり

さて、このように見てくると、血圧が上がったから肩が凝ったのではなく
肩をこらせるような体の状態が、血圧をあげていたことが理解できるのではないかと思います。

鍼灸で自律神経を整えたり、血液循環を良くすると
肩こりが取れるだけでなく、血圧も適正な数値に落ち着くことが多いのも
納得いただけるのではないでしょうか?

血圧に関してはまだまだ書きたいことがたくさんあります。
その一つに、現在の血圧の基準値が異常に低く設定されていることがあります。

そのために本来薬を飲む必要のない多くの人が、血圧の薬を飲み続け、
薬の副作用により健康を害している方が少なからずいることです。

近いうちにそのことについても詳しく書きたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。