慢性腰痛を治すために知っておきたいこと
慢性腰痛でお困りの方は非常に多く、当院にもたくさんの方が鍼灸治療にいらっしゃいます。
慢性腰痛は病院では治りづらい症状のひとつで、湿布や薬をもらい、電気治療や牽引などをしてもあまり効果がないのが普通です。
なぜ病院に通っても治らないのでしょうか?
ひとつには、腰痛には原因の異なる様々なタイプがあるために、病院の画一的な治療では効果が出ずらいからであり、
もうひとつは、腰以外の部分に腰痛の原因があることも多いために、腰だけを診察してもわからないことがたくさんあるからです。
いくつか例をあげてご説明します。
目次
- 慢性腰痛の代表的な3つのタイプ
- ① 筋肉、関節、椎間板などに損傷があるタイプ
- ② 腰を支える力が不足しているタイプ
- ③ 慢性炎症と循環障害のタイプ
- おなかに原因がある腰痛の例
- 腰痛改善のため自分でできること
慢性腰痛の代表的な3つのタイプ
一口に慢性腰痛と言っても、痛みの出かた、痛む場所、痛みの性質は様々です。
慢性腰痛の代表的な3つのタイプについて、痛みの出かたや性質をご紹介します。
① 筋肉、関節、椎間板などに損傷があるタイプ
腰を曲げる、伸ばす、ひねるなど特定の動作で、強い痛みを腰の一部に感じます。
動かさなければ痛みませんが、朝起きた時や、じっとしていた後の動き出しなどは痛みが強い傾向があります。
ギックリ腰などの急性腰痛が治りきらずにこのタイプの腰痛になることも多く、時々ギックリ腰を再発させて動けなくなる方もいます。
② 腰を支える力が不足しているタイプ
腰の比較的広範囲に、鈍い痛み、だるさを伴う痛み、重いような痛み等があり、長く立っていたり動いていると痛みが強くなり、座って休むと楽になります。
朝は痛みが軽く、疲れてくる夕方などに痛みが強くなります。
腰に痛みがあっても、曲げる、伸ばす等の腰の動きは問題なくできることが多いです。
高齢の方に多く見られる腰痛ですが、立ち仕事の長い方や肉体労働をする方、体力のない方、胃腸虚弱の方などは若くてもこのタイプの腰痛が出ることがあります。
③ 慢性炎症と循環障害のタイプ
同じ姿勢で座っていると腰が重苦しく痛み、立ち上がって動くと楽になります。
じっとしているのがつらいために、座っている間は足を組み替えたり、腰をもぞもぞ動かしたりしています。
暴飲暴食の後や、梅雨時などジメジメする季節に腰痛が悪化することがあります。
痛みがひどくなると、立ち上がる時に腰が抜けるような感じが出ることもあります。
お酒の好きな方や、ごはん(お米)をあまり食べず砂糖や脂質を摂りすぎている方によく出る腰痛で、不適切な食生活により老廃物がたまり循環が悪くなり、慢性的な炎症を生じたための腰痛です。
このように慢性腰痛には、痛む場所も痛み方も違う様々なタイプがあります。
治療にいらっしゃる前に、ご自分の腰痛について、どのあたりに、どんな痛みが出るのか、どうすると痛いのかを観察し、初診時に教えていただけると効果的な治療を行いやすくなります。
なお、痛みかたはあなたの感じる体の感覚を、あなたの言葉で伝えていただくのがベストです。
「ズーンとする」「キリキリ痛む」「あり苦しい」「ピキッとする」など皆さん様々な言葉で痛みを表現してくれます。
その痛みの表現や痛む場所、痛みの出かたなどをもとに、詳しい質問をさせていただき痛みの原因を推測し、さらに痛む部位やその周辺を触診することで腰の状態を確認します。
また、お腹の調子や睡眠の様子、便通や排尿の状態、月経時の体調など腰に影響を与える体の他の部分についても、来院時にご記入いただく予診票をもとに質問をさせていただきます。
予診票は来院前にダウンロードしてご記入いただくこともできます。
おなかに原因がある腰痛の例
腰痛の原因が腰以外にあることも多い、と述べました。
例えばお腹の状態は、腰に直接的な影響を与えます。
腰は背骨の前方から、腹圧という腹腔内の圧力によって支えられているからです。
そのため、胃腸の働きが悪いと腰を十分に支えられなくなり、姿勢が前かがみになり筋肉にこわばりが出て慢性的に腰が張って苦しくなったり、
椎間板の前方にかかる負担が大きくなり椎間板ヘルニアを発症し、ズキンという鋭い痛みに悩まされたりします。
このような腰痛は、腰だけ治療しても治りません。
お腹の状態について詳しくお話を伺い、胃腸の調子を整えるツボにも治療を行わなければ腰痛を治すことはできないのです。
腰痛改善のため自分でできること
「腰を治すために自分で出来ることがありますか?」という質問をいただくことがあります。
治療を受けるだけでなく、自分で出来ることをしたいというお気持ちは素晴らしいと思います。
慢性腰痛を治すためにご自分でできることは、痛みの原因や腰の状態によって一人ひとり異なります。
例えば、腹筋運動が効果的な腰痛もあれば、腹筋運動により悪化するおそれのある腰痛もあります。
温めたほうが良い場合もあれば、冷やしたほうが良い場合もあります。
診察を受けていただくと、その方の腰の状態に合ったアドバイスができますが、一般的には心地よく感じたり、楽な感じがする方法は、その方の腰の状態に合っています。
例えば、冷やすと心地よい場合は冷やすとよく、温めると心地よい場合は温めるほうが合っています。
前に曲げると心地よい場合は前に曲げるストレッチが良く、後ろにそらすと心地よい場合にはそのようなストレッチが合っています。
やってみて心地良くなく、楽になった気がしない方法は、たとえ専門医から勧められたことであってもその方の体に合っていないことが多いのです。
体に合うことは心地よく、合わないことは心地よくない、これは腰に限らず体のどの部分にも当てはまる健康法や自宅療法を選ぶときの一般的な目安です。
ぜひご自分の感覚をもとに、ご自分に合った方法を試してください。
とはいえ慢性腰痛の場合には、腰の状態が「自然に回復する範囲」を超えてしまったために痛みが長引いているのですから、ご自分で出来ることには限りがあります。
辛い痛みを長引かせるよりも、診察に来て治療をお受けになることをおすすめします。
今日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。