数十メートル歩くと腰から足にかけ痛みが出て歩けなくなり、しゃがんで休むとまた歩けるようになるが、しばらく歩くとふたたび痛くなる、というような症状に悩まされている方がいます。


病院では「坐骨神経痛」あるいは「脊柱管狭窄症」と診断されますが、坐骨神経痛の原因の1つが脊柱管狭窄症ですので、どちらの病名でも間違いではありません。


脊柱管狭窄症は、脊柱管という背骨の後方にある神経の通り道が狭くなったために、腰や足に行く神経が圧迫される病気で、テレビ司会者のみのもんたさんが手術を受けたことで有名になりました。


女性よりも男性に多く、50歳以上の中高年の方に多く発症します。

この、脊柱管狭窄症の症状や原因、治療法について解説します。

目次

神経痛と神経麻痺、2つのタイプの狭窄症

脊柱管狭窄症には、神経麻痺を起こすタイプと神経痛を起こすタイプの2種類があります。

どちらも数十メートル歩くと歩行が困難になり、腰を曲げて休むと再び歩き出せるという点は共通していますが、神経麻痺を起こすタイプは両足がシビレたり力が入らなくなって歩けなくなるのに対して、神経痛を起こすタイプは片方の腰から足にかけて痛みが出るために歩けなくなるという違いがあります。

神経麻痺が起きるタイプは「馬尾型(ばびがた)」と言い、神経の圧迫が広範囲で起きているとされ、重症の方の場合は便秘や尿閉、あるいは便や尿の失禁などを伴うこともあり手術の適応とされています。

みのもんたさんは、このタイプだったのではないかと推測されます。

早期に手術を行えば症状の改善効果は大きいのですが、1ヶ月に及ぶ長期の入院が必要となり、術後の癒着等の問題もあります。

一方、神経痛を起こすタイプの狭窄症は「神経根型」と呼ばれ、麻痺を起こすタイプにくらべて神経の圧迫が軽度であると言われ、投薬やリハビリで様子を見ることが多く、いきなり手術を進められることはありません。

ですが、内服薬や湿布、電気や温熱治療などの効果は限定的であり、長期間通院しているのに楽にならないと言う方がたくさんいます。

「骨の変形」イコール「治らない]ではない

病院では脊柱管狭窄症について「老化により骨が変形して神経を圧迫している」という説明をするために、手術以外では治らないというイメージを持つ方が多いのですが、ほとんどの方は鍼治療で楽になります。

神経痛タイプの方は完全に症状が取れ再発しない方も多く、神経麻痺タイプの狭窄症でも症状がかなり軽くなることがあります。

骨が変形しているのに鍼の治療で改善するのは、脊柱管狭窄症は骨の変形のみが原因で起こるのはなく、脊柱管の中のむくみや炎症、循環障害などいくつかの原因が重なったために起こる病気であるからです。

つまり骨の変形は治らなくても、むくみや炎症が取れ循環が良くなると、神経を圧迫しなくなることが多いからです。

中医学では痰湿と瘀血が原因

脊柱管狭窄症は、中高年の男性に多く発症するという特徴以外に、肥満型で食欲旺盛な方やお酒好きな方に多く発症するという特徴があります。

さらに脊柱菅狭窄症の方に食事の内容を詳しく伺うと、油や砂糖、肉や乳製品や小麦などお米以外のものからカロリーをたくさん取っている傾向が顕著にあります。

むくみや炎症や循環障害も脊柱管狭窄症の原因であるというお話しをしましたが、アルコールや脂質や砂糖は体に老廃物を溜め込み循環を悪くし炎症を引き起こしやすい食品なのです。

そのため、これらの食品やアルコールの摂取を控え、鍼の治療をうけることで脊柱管内のむくみや炎症を解消し循環障害を改善することで大半の方の症状は治癒、もしくは改善することができるのです。

ちなみに、偏った食事等で体に老廃物が溜まった状態を中医学では「痰湿」と言い、循環不良が痛みを引き起こした状態を「瘀血」と言いますが、痰湿と瘀血は脊柱管狭窄に限らずガン、心臓病、脳血管障害など多くの生活習慣病に共通する原因です。

お米を食べ、お酒を控えること

食生活の改善が生活習慣病の予防のカギであることは、医師や管理栄養士など多くの専門家が口をそろえるところですが、現代の食事指導にはいくつかの大きな欠点があります。

その一つが炭水化物と砂糖を同じ「糖質」として扱い、制限を呼びかけていることです。

砂糖は専門用語で「単糖類」と言い、素早く吸収され血糖値を急上昇させるなど体に負担をかける「取りすぎてはいけない食品」の代表格ですが、炭水化物は「多糖類」と言い血糖値を適切に保ちながら体に長時間エネルギーを供給し続ける食事のベースとなるべき必要なエネルギー源です。

炭水化物が足りないと、不足したカロリーを油や砂糖などから多く摂取するようになり、体は老廃物を溜め込み炎症を起こしやすくなります。

健康を保つためにはお米をしっかり食べることで、砂糖や油を摂りすぎないようにすることが大切なのです。

また、アルコールに関しては「酒は百薬の長」と言い、少量のアルコールは健康に良いと言われてきましたが、これはお酒が高価でたまにしか飲めない時代の言葉であり、現代では事情が異なります。

現代ではお酒が安くなり毎日飲むこともできますが、たとえ少量のお酒でも毎日飲めば寿命を縮めることが、欧米での大規模比較調査により確かめられています。

たまに少量飲むくらいは問題ありませんが、毎日飲む人、たくさん飲む人などは体に確実に害を及ぼします。 くれぐれもお気をつけください。