「ストレスは万病のもと」です。



イライラや不安、気分の落ち込みなど心の苦しさを生み出すとともに、肩こりや頭痛、不眠や胃痛など様々な症状の原因になります。


ストレスは癌や脳卒中、心臓病などのリスクを引き上げることも知られています


また、ストレスを受けると免疫力が低下するため、細菌やウイルスなどの感染症にもかかりやすくなります。


風邪は万病のもとと言いますが、風邪をひきやすくさせるストレスこそが万病のもとと言えるのではないでしょうか?


今回は、ストレスが心身に与える影響と、どのようにしてストレスから解放されたらよいのかについてお話します。

目次

ストレスとは「生存に不利な刺激」を受けること

ストレスとは何でしょうか?
嫌な出来事や嫌な人のことでしょうか?

ストレスは医学的には「外部からの刺激によって体内に生じる反応や緊張状態のこと」と定義されていますが、この定義は漠然としている気がします。

心理学では、「生存に不利な刺激や生存の危機となる刺激を心身が感じること」と定義づけたりもしますが、こちらのほうが私にはしっくりきます。

事故や災害に遭うなどは典型的な生存の危機ですから強いストレスと言えます。

また、人間は社会的な生き物ですから、地域や職場、家族といった集団の中で孤立したり立場を失うことは生存に不利になります。
ですから上司に叱られる、学校で仲間外れにされる、仕事で失敗するといった事も大きなストレスになります。

さらに、実際にそうならなくても、「叱られるんじゃないか」「仲間外れになるんじゃないか」と考えることもストレスになります。

考えるだけでなぜストレスになるのでしょうか?
それは、考えは感情を生むとともに自律神経の変化を引き起こすからです。
嫌なことを考えると、嫌な気分になりますよね。そしてその時には体にも嫌な感覚が感じられるはずです。
この嫌な感覚は、自律神経が緊張し体が緊張モードや警戒モードに入ったことで生じているのです。

ですから心配性の人は、嫌なことが起きなくてもたくさんのストレスを受けている、という場合があります。

ストレスは、外側の刺激で起こるだけでなく、心の中で作り出されることも多いのです。

では、ストレスを受けると私達の体や心にはどのような変化が起こるのでしょう?

ストレスが体に及ぼす影響【筋肉を硬くする】

ストレスは体に様々な影響を及ぼしますが、その主なものは筋肉を硬くすることです。

ストレスを受けると私達の体は緊張して硬くなります。
自律神経が緊張したことで、無意識のうちに筋肉に力が入るからです。

緊張すると肩が凝るのも、肩の筋肉に力が入った結果です。

また、顔の表情が固くなったり声がひっくり返ることもあります。
表情筋や喉の筋肉に力が入りこわばったからです。

あまり知られていないことですが、内蔵の多くも平滑筋という筋肉でできています。

ストレスを受けると内臓の筋肉も緊張するために胃や腸の動きが悪くなり、胃痛や便秘や下痢を引き起こしたりします。

心臓がドキドキするのも心筋の過剰な緊張のためです。

このようにストレスが体のあちこちの筋肉を硬くするのは、予想される危険に対して身構えているからです。

いつでも闘ったり逃げたりできるように、筋肉にエネルギーを供給して体をスタンバイ状態にしているのです。

このような体の反応を「闘争・逃走反応」と呼びますが、「闘争・逃走反応」は体だけでなく心にも起こります。

次に、ストレスが心に及ぼす影響について見てみましょう。

ストレスが心に及ぼす影響【思考の幅を狭める】

ストレスを受けたときに私達の心、あるいは頭の中はどうなっているでしょうか?

多くの場合、嫌な考えがぐるぐると巡っているのではないでしょうか。

例えば失敗して怒られる場面が何回も浮かんだり、どんな言い訳をしようかあれこれ考えたりするのではないでしょうか?

この状態はとても苦しいですが、これも予想される危険に備えるために自律神経が緊張し、思考の幅を制限した状態なのです。

危険が迫っている時にのんびりと楽観的な事を考えていたら命を失うかもしれません。
そこでストレスを感じたときには、予想される結果の中でも最悪な事態が頭に浮かぶようにできているのです。

さらにその事態への対処方法を考えたときにも、同じ考えがぐるぐると頭の中を巡るだけで、いろいろな角度から落ち着いて検討するということができなくなります。

これも危険に対処し生き延びるための自律神経の戦略です。

危機を乗り切るには素早い行動が必要です。そのためじっくり考えベストな選択をするのではなく、とりあえずその場をしのげるやり慣れた方法だけが頭に浮かぶようになっているのです。

ストレス状態が続くと心身は疲弊する

このように、ストレスを受けたときの心身の反応、「闘争・逃走反応」は、危険に対処し生き延びるために起きる、いわば「よい反応」と言えるものです。

しかし、この反応が長く続くと体と心は耐えられなくなります。

「闘争・逃走反応」は、危険に対し一時的に起きるべき反応で、その状態をずっと続けることはできないからです。

体に力が入り続け、精神の緊張が持続するなら心身はエネルギーを消耗して疲弊してしまいます。

また、胃腸の働きが悪くなったり睡眠に問題が生じることで、消耗した体が回復できなくなります。

健康な心身を保つためには、「闘争・逃走反応」は必要なときにだけ起こり、危険がないときには体や心はリラックスした状態に戻る必要があるのです。

リラックスした状態に戻れば、健康に良いだけでなく、問題があるときでも落ち着いてじっくり考えベストな対処方法を導き出すことができるのです。

私達人間は大脳が発達したために、先のことをあれこれ想像し思い巡らす事ができますが、そのせいで余計な心配をしてストレスを持続させる事があります。

またテレビなどマスコミも、視聴率を上げるために悪いニュースばかりを流し、しかも大げさに伝える傾向がありますが、このような報道によりストレスを受け続けることもあります。

このように私達の日常生活では、実際の危険がなくてもストレスを受け続ける、ということが起きがちで、多くの人の心身の健康が損なわれているのです。



さて、次回はストレスから解放され心身をリラックス状態に戻すための方法についてお話したいと思います。

鍼灸やマッサージの効果についてだけでなく、趣味や運動や嗜好品などを効果的に活用する方法についても取り上げてみたいと思います。

今日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。