前回の記事で、倦怠感には体力不足タイプと循環不良タイプがあることをお伝えしました。


体力不足タイプは、動くとだるく休むと楽になりますが、循環不良タイプはじっとしているとだるさが強く動くとむしろ楽になる傾向があります。


今回は、循環不良タイプのだるさのうち、代表的な2つについて症状の特徴や生活上の注意を紹介したいと思います。

目次

循環不良が原因でおこるだるさの、よくある2つのタイプ

循環不良というと、血液循環の不良を思い浮かべると思いますが、東洋医学では人体には気の循環、血の循環、水の循環の3つがあると考えています。

このうち、だるさと関係が深いのは気の循環と水の循環です。

気とは体を動かすエネルギーのことで、気がスムーズに循環していると、心身に余計な緊張はなくリラックスしていられます。

ストレスを感じ、不安や焦りなどの感情が心や体を緊張させると気の循環が悪くなります。すると初期にはイライラや不眠など神経の張り詰めた状態が続きますが、長期化すると活動力が低下し、だるくてなにもやる気がしない状態になります。

また、運動不足や不良姿勢などで首肩や背中にコリを生じ、コリが気の循環を悪くし、だるさにつながってゆくこともあります。

だるさを生じるもう一つの原因である水の循環不良は、主に偏った食事やお酒の飲み過ぎなど不適切な飲食の習慣から生じます。

不適切な食習慣により体の中に老廃物が溜まることで体内の水分の流れが悪くなり、じっとしているとだるいためデスクワークなど同じ姿勢でいることが辛い、というようなだるさが出ます。

これら2つのタイプについてもう少し詳しく解説します。

① 気の循環が悪くなったためのだるさ

心身のリラックスした状態が気の流れの良い状態と説明しましたが、気の流れの悪い状態とは心身が緊張した状態であり、自律神経が緊張した状態でもあります。

周囲を警戒し身構えている状態とも言え、不安や緊張などの感情で体や心がこわばった状態ですが、長期化するうちに心身が疲弊し、慢性的なだるさを感じるようになります。

気持ちがふさいでやる気が起きない、嫌な考えが頭から離れないといったメンタルの不調に体のだるさをを伴い、寝て休んでも楽にならず、むしろ体を動かして何かを始めてしまうとだるさが軽減し、それとともに気分も幾分楽になります。

「動いてしまえば動けるんだけれど、やる気になれない」というような表現をする方もいます。

うつ病なのではないかと悩み、心療内科を受診する方も多くいます。

このような方は、だるさが軽度のうちは、体を動かすことで気を巡らせることで改善できます。

軽く汗をかくくらい動くと効果が大きく、早足のウォーキング、廊下や台所の雑巾がけ、車のワックスがけなどあれこれ考えず無心で体を動かせることをやってみてはどうでしょうか。

体を動かすことには気を巡らせる以外にもう一つ良い効果があります。それは、頭の中の不要な考え事が鎮まるという効果です。

考え事を続けると不安や緊張が高まります。
これは、多くの方が経験されていることだと思います。

無心に体を動かすと考え事が止みます。体を動かすのをやめると再び考え事が始まるかもしれませんが、体を動かす前よりは静かになっています。

静かになったなら考え続けることの無意味さに気づいて、考え事から離れてみることをお勧めします。

このように、体を動かすことは気の流れを改善する効果がありますが、タイプのだるさが慢性化してしまうと、運動をしようという気に全くなれないかもしれません。

そのような場合には鍼の治療をお勧めします。
鍼の治療はよく効きます。

鍼は怖い、という方はマッサージをお勧めします。マッサージでもかなり効き目が期待できます。

② 水の循環が悪くなったためのだるさ

人体には、リンパ液をはじめとする様々な水分の循環があります。
この体の中を循環する水分を東洋医学では津液(しんえき)と呼びます。

津液には体を潤したり、ほてりをさましたりする効果がありますが、循環が悪くなった津液は「湿邪」と呼ばれる有害な物質になります。

湿邪が体にたまると、まるで水道管の内側に汚れがベッタリと貼りついたかのように、体がだるくなりまた重苦しくなります。

この重苦しさは、じっとしていると強くなる傾向があり、車の運転やデスクワークなど同じ姿勢でいることが苦痛になります。

椅子にじっと座っていることができずに、モゾモゾと体を動かし足を組み替え、時折立ち上がって歩き回る、というような状態になります。

湿邪はだるさの原因になるだけでなく、腰痛や坐骨神経痛、頑固な肩こりの原因にもなります。

また、湿邪が胃腸に影響すると、胃もたれや胸焼け、便がスッキリと出ないなどの症状を伴います。

先程述べたように湿邪が生じる主な原因は、不適切な食生活にあります。
具体的に述べると、砂糖、小麦、乳製品、脂質、アルコールのとりすぎなどです。

このような湿邪によるだるさにも、鍼の治療は大変効果的です。
鍼治療で体調を整えるとともに、再び湿邪が生じないように食生活の見直しに取り組むことをお勧めします。

また、湿邪は梅雨時などジメジメした季節に、気候の影響を受けて生じることもあれば、細菌やウイルスの感染により生じることもあります。

参考までに申し上げると、新型コロナも湿邪の性質を持つ感染症であり、発熱とともに強いだるさが出たり、後遺症として長期間だるさが残ったりするのも湿邪が津液の循環を悪くするからです。

コロナのあとにだるさが抜けないという方も、鍼の治療が効果的ですのでお困りの方はぜひご相談ください。


今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。